BoKビルディング

SimpleModeling.orgは、文芸モデル駆動開発(Literate Model-Driven Development)を軸としたモデリング技術を主題とする技術情報サイトです。

同時に、生成AIを活用したAI駆動開発(AI-Driven Development)の実現に向けた知識構築・共有基盤の研究と実践も視野に入れています。

AIによる文芸モデル支援を実現するためには、モデルや設計思想、用語定義、開発パターンといった「開発の文脈」をAIと共有する必要があります。

この文脈共有の核となる知識体系をSimpleModelingではBoK(Body of Knowledge)と呼んでいます。

BoKの構築は、知識の共有、教育、AIによる支援、自動化、意思決定支援を可能にするための基盤です。

BoKビルディングとは、特定の分野における専門的な知識・技術・概念・実践を体系的に整理し、再利用可能な知識構造として構築するプロセスを指します。

SimpleModelingでは、BoKの構築と運用をAI活用の中核的テーマと位置づけています。

Webを通じたBoKの提供

BoKの基盤としてWeb技術を最大限に活用します。

人間の理解とAIの処理の両方を考慮し、以下の観点で知識を整理・公開します。

人とAIの両立

  • 人間が読んで理解・活用できるドキュメント

  • AIが構造的に把握し解釈できるメタデータ

従来の構造化データは機械処理には向いていますが、人間にとっては読みにくく、学習・理解には適しません。

逆に、人間中心のドキュメントは、AIにとっては文脈を把握しにくいことがあります。

SimpleModelingではこのギャップを埋めるBoKの設計を目指します。

Webメタデータの活用

以下のようなWeb標準のメタ情報を活用し、ページ単位で意味づけを明示します。

  • HTML head

  • Open Graph Protocol

  • Twitter Cards

  • JSON-LD

  • robots.txt / humans.txt

  • Atom Feed

  • RDF (RDF/XML, Turtle, JSON-LD)

これらを丁寧に設計・設定することで、検索エンジンやAIがより高精度に文書の意味を理解できます。

サイト構成の知識表現

リンク構造や分類体系も、知識の一部です。以下の仕組みを整備することでBoKの明瞭化を図ります。

  • サイト構成

  • 用語集

  • キーワード

  • 索引

  • 参考文献

  • 外部参照リンク

  • 文脈情報

用語は文脈に応じて意味が変わります。文脈を明示できれば、AIはより正確に用語の意味を把握できます。

SimpleModeling.orgは、こうしたオントロジー技術と生成AIを連携させる実験の場でもあります。

国際化対応

グローバルな開発環境では、国際化(I18N)が不可欠です。

英語ともう一つの主要言語(例:日本語)に対応することで、多くのニーズに対応できます。

SmartDoxでは多言語対応のための構造化手段を用意しており、BoK構築においても言語切替や翻訳支援が容易です。

BoK構築のための技術基盤

SimpleModeling.orgでは、BoKを構築・運用するために以下の技術スタックを用いています。

SmartDox

ドキュメント記法・ツール群

Arcadia

サイトトップなど視覚的ページを生成する静的サイトジェネレータ

Antora / Asciidoc

技術記事を扱う構造化文書フレームワーク

Bokビルディングの流れ
Figure 1. Bokビルディングの流れ

SmartDox

SmartDoxは、SimpleModeling.orgの主宰者である浅海が開発した、Markdownの軽快さにAsciidocやOrg-modeの構造表現力を融合した独自の文書記法とオープンソースの文書処理系です。

複数のSmartDoxファイルを階層的にまとめることで、1つのサイト構造(SmartDoxサイト)を形成できます。

このSmartDoxサイトを元に、以下の2種類の出力を生成できます:

Arcadiaサイト

トップページやビジュアルな誘導ページ用

Antoraサイト

BoK本文や技術ドキュメント用

SmartDoxサイトは、階層ディレクトリにSmartDox文書とメタデータのテキストファイルを配置する構成のため、Gitなどのテキストベースのバージョン管理システムで管理できます。

データベースなどの特別なミドルウェアは不要で、階層ディレクトリとメタデータからサイトの構造を自動的に読み取り、適切にデータ化されます。

用語集やキーワードに対しては、自動的にリンクが貼られ、BoKとしての可読性とAI解釈性の両立が実現されます。

Arcadia

Arcadiaは浅海が開発したオープンソースの静的サイトジェネレータ(SSG)です。 Bootstrap 5ベースのレスポンシブなWebページを生成します。

SimpleModeling.orgでは、ArcadiaとAntoraを以下のように使い分けています:

トップページ、カテゴリトップページ

Arcadiaで生成(視認性重視)

記事ページ

Antoraで構築(可読性・構造重視)

Antora / Asciidoc

Asciidocは技術文書向けに広く使われているマークアップ言語で、Antoraはその文書群をナビゲーション付きサイトとして構築するためのツールです。

SmartDoxからAntora互換のAsciidocを生成することで、BoK全体をAntoraによって技術文章の公開に適したWebサイトに編成することができます。

またAntora/Asciidocは広く使われているので、AIによるWebサイトの解析にも有利に働くことが期待できます。

プロジェクト内部用BoKであれば、Arcadiaを使わずにSmartDox + Antoraのみで完結できます。

AIとの知識共有

BoKは、AIと開発者の知識の共有インターフェースでもあります。

以下の形式でBoKをAIが学習することが可能です:

  • HTMLサイト(汎用性が高い)

  • Antoraサイト(技術文書として構造化)

  • SmartDoxサイト(最も文脈密度が高い)

HTMLサイトはWebとして公開することで、AIが通常のWebサイトの解析手法を使って解析を行うことができます。

これらはいずれもテキストベースの構成のため、Gitでの管理やAI入力に適しています。

Antoraは広く使われている技術なので、その構造を把握できるAIにとっては、高精度な学習ソースとなります。

SmartDoxサイトも、AIに構造を学習させれば、さらに高精度の学習ソースとなります。

SSGによるBoK構築の利点

データベースを用いた動的生成型サイトは、コンテンツの構造がリクエスト時に動的に生成されるため、BoKのソースとしては構造把握が難しく、不利です。

またAngularやReactなどのJavaScriptフレームワークを用いたSPA(Single Page Application)形式のサイトもDOMがクライアント側で動的に構築されるため、検索エンジンやAIがHTML構造を直接解析するには不向きです。

特にAIがBoKを学習・解釈する際には構造が明示されたHTMLやマークアップを静的に取得できることが重要です。静的HTMLであればリンク構造や文書階層、用語の位置づけなどをAIが高精度に理解できます。

BoKビルディングにおいては、SSG(静的サイトジェネレータ)による構造化・明示的な知識の公開が、AIとの連携において極めて重要です。

SimpleModeling.orgでは、こうした要件に対応するために、ArcadiaやAntoraといった静的サイト生成技術を採用し、構造的に整理されたBoKを確実にAIに届ける仕組みを構築しています。

また、開発者にとっての可読性や使いやすさを高めるために、CSSやJavaScriptの最新技術を静的構造と共存させることで、視認性とビジュアル性を損なうことなく表現力を強化しています。

これにより、人間とAIの両方にとって扱いやすく、構造的かつ直感的に理解可能なハイブリッドなBoKサイトが実現されています。

まとめ

  • 簡単に導入できる構成で、BoK構築のハードルを下げる

  • Webメタデータに基づく意味づけにより、検索エンジンやAIによる理解を支援

  • 自動リンク構築機能により、BoK内の用語や文脈を相互に接続

  • 多言語対応の仕組みにより、国際的な利用者とAIの双方に対応

  • SmartDox/Antora/Arcadiaにより、構造・視認性・拡張性を両立したBoKを構築

  • Gitベースの管理で、履歴追跡・チーム運用・AI学習への提供が容易

  • AIと人間の双方が活用できるBoKとして、「読める+解析できる」文書を実現

  • SPAに依存せず、静的構造と最新のWeb技術を両立させることで、AIと人間の双方に最適なBoKを実現

図解:AI活用のアーキテクチャ

図解:AI活用のアーキテクチャ
Figure 2. 図解:AI活用のアーキテクチャ

この図は、サイトの目的で説明した文芸モデル駆動開発全体のアーキテクチャを示しています。

本記事で扱ったBoKビルディングは、このアーキテクチャ内における「AI学習」および「BoK管理」に相当する部分を深掘りしたものです。

BoKは、AIが文芸モデルを支援するための知識共有インターフェースであり、AI駆動開発の基盤技術として不可欠な要素です。

本図は、BoKとAI支援の位置づけを理解するための参考としてご活用ください。